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高齢者中心、個人は若者と家族連れ」(ヒルトップの管理者)。
またタイムズ紙の記事には、日本人が「かわいい」と思うものや「知っている」ものに惹かれる、と記されているが、この点については、ヒアリング調査からも類似するコメントが得られた。「湖水地方の自然環境は素晴らしいのに、日本人は見向きもしない」(World of Beatrix Potter管理者)、「湖水地方はピーターラビットだけの場所ではないのに、日本人はここに集中する」(地元学生)等である。すなわち、日本人観光客が湖水地方を訪れる動機は、ピーターラビットに対する「かわいい」あるいは「知っているから」という愛着によるものが強く、欧米人の多くが「自然環境を楽しむ」ために湖水地方を訪れるのとは大きな違いがある。
団体旅行で訪れる観光客は、「自然環境を楽しもうとしない」といわれるツアー形態をとっていることが考えられるが、これには旅行業者の紹介方法も原因していると考えられる。例えば、
。. シンボルや価値付けされたもののみを観光資源として取り上げ紹介しがちである。
「. 地元住民や地域の環境など、資源の周囲に目を向けさせない(ex.地元ではトラストが周辺の農作物のコントロールをするなど景観美に配慮し、グリーンツーリズムを楽しませる努力をしているが、そのようなことはツアーでは紹介されない)。
」. エジンバラーロンドン間を結ぶ観光コース上の立寄地点としての位置づけを脱しないこと等により、特異視される観光形態を生み出していることが考えられるのである。
3)日本人観光客の訪問形態からみた問題点ヒアリングの結果から、湖水地方における日本人観光客の問題点として明らかになったのは、次の3点である。
。. 特定資源のみを紹介し、多様な楽しみ方を教えない旅行業者側の問題
「. 観光客の一時的集中を招く、旅行業者依存型、一ヶ所立寄型の観光形態
」. 日本人観光客の、受け身的観光形態
これらの結果として、日本人観光客(団体)は、湖水地方の最もすばらしい資源である自然環境にひたる機会を逃すとともに、この地域が課題として抱えている交通網と観光受け入れ体制の不備を増長させる結果を招いている、と考えられる。しかし、実数の上ではタイムズ紙の主張には合致せず、とくに日本人を取り上げて問題提起するヒアリング対象者はいなかった。

 

(5)地元関係者の受けとめ方
1)観光全体に対する受けとめ方
では、地元の人たちはこの地域で展開されている観光について、どのように受けとめているのだろうか。
「『旧住民』6)は多かれ少なかれ観光から恩恵を受けている。混雑はわずかな代償と捉えているが、『新住民』は静かな環境を求めて移住してきた。観光客に増えて欲しくないと思っている」(旧住民)、「観光客が集中する短時間だけが問題だと思っている」(ヒルトップの管理者、旧住民)というのが、古くからこの地域に居住する、いわゆる『旧住民』の意見である。しかしここに指摘されているように、『旧住民』と『新住民』との間には意識の違いがあり、この地域の良好な自然環境を求めて移住してきた『新住民』は、自分たちが得た居住環境を観光客に侵されたくない、という感情が強いようである。
2)日本人に対する受けとめ方
次に、タイムズの記事を読んで知っている彼らに、日本人観光客について聞いたと

 

 

 

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